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スローガン】
Metamorphose
~おやべに変革を起こせ~

 2024年度理事長  林 登

【はじめに】

 焼け野原になった戦後の東京において1951年、「新日本の再建は我々青年の仕事である」と立ち上がった青年たちによって日本青年会議所が設立されました。富山大空襲で大きな被害を受けた富山において1952年、富山懸青年会議所が設立されました。その後、県内各地の拡大分離を経て1972年、小矢部青年会議所が創立されました。それ以降、小矢部において52年間に渡り「明るい豊かなまち」の実現へむけて、JC活動・運動を展開してきました。私たちは先輩諸兄らが築いてこられた50年を鑑み、これからの新たな50年を歩んでいくべきであります。
 過去の50年を振り返ると、日本の高度経済成長という大きな波の中で小矢部も成長と発展を遂げてきました。戦後では考えられなかった一人一台の自家用車の普及は私たちの生活を一変させ、まちの姿を変えてしまいました。石動や津沢のまちを中心とした歩いて暮らせるまちから、砺波市を中心とした車社会へと変貌を遂げました。さらに、こどもを取り巻く環境も大きく変化をしました。三世帯同居率は23.6%にまで年々減少し、祖父母と同居するこどもは少なく、こどもたちの放課後の過ごし方も大きく変わりました。また、一億総中流社会が崩壊し日本では7人に1人の子どもが貧困状態にあるといわれています。
 これから先の50年を展望することが、小矢部に住み暮らす私たちの仕事であります。しかし、それは容易ではありません。なぜなら、社会の変化は過去の50年よりもものすごい速さかつ世界規模で起こっているからです。現在、第4次産業革命とよばれるAI・IOTの時代ですが、既に第5次産業革命の議論が各国でされ始めています。このままでは時代に取り残されてしまいます。時代を捉え、真に地域の課題解決に取り組まなければいけません。先の50年を見据えたうえで、おやべの地域へインパクトを与えられるJC活動・運動を展開していくことが必要です。
 そのために、私たち自身が変容し時代の一歩先を進むべきです。過去の慣例・慣習・常識に捉われず、地域の課題解決のために変化・変革することを恐れないでください。私たちは地域のためにJC活動を変容させ、JC運動を変容させましょう。そのために私たち自身の考え方を変容させ、自己成長を成し遂げましょう。おやべに変革を起こすこと、これは私たち小矢部青年会議所の使命です。

【まちの未来を描く】

 1962年、旧石動町と砺中町の合併により小矢部市が誕生しました。合併当時の人口は36,727人でした。その後、国道8号線や北陸自動車道、東海北陸自動車道の整備により車中心のまちづくりがされてきました。人口減少の中での人口分散が結果的に、旧町の中心市街地であった石動・津沢のまちの高い人口減少率や空き家の増加につながりました。居住地が郊外へ薄く広く拡散したまちのインフラ整備は、財政的に困難になり維持することが難しくなることが想定されます。さらに、車を運転できない住民にとっては暮らしにくいまちになっています。このまま無秩序に都市が拡大していくことは、良いことなのでしょうか。私たちは、まちの成り立ちや“現在”を改めて認識し、地域の根本的な課題を的確に捉えることが必要です。
 車所有台数世界一の米国においてまちづくりの有名な事例があります。オレゴン州ポートランドでは、1970年代に「ウォーカブルシティ(歩くのが楽しいまち)」へとまちづくりの方針を大きく転換しました。もちろん、それまでは車を中心とした車社会でありました。ポートランドは都市と郊外の境界線を導入し郊外への無秩序な都市化を抑えるとともに、まちの区画は歩くことを前提に一辺が通常の半分の長さである60mに整備され、歩ける距離に住居や職場その他の生活インフラが配置されました。そんなポートランドは、「全米で最も住んでみたい都市」として高い評価をうけています。
 今一度、まちのあるべき姿を見直し、車中心の社会からひと中心の社会へシフトすべきであります。歩いて暮らせるまちを構築していけば、車がなくても暮らすことができます。さらに、健康寿命の延伸やまちの地価上昇など経済的効果も期待ができます。国もウォーカブルシティを推進しており、街路空間の再構築や利活用をすることで歩きやすいまちづくりを進めています。おやべにおいても車社会を脱却し、ひとを中心とした持続可能なまちへ変容させましょう。
 さらに、中古住宅ニーズが低いおやべでは、郊外への人口拡散に伴い石動・津沢のまちに空き家が増え続けています。原因は住民の価値観として新築が好まれることや、空き家の購入には様々な障壁もあり空き家市場が未熟であることが挙げられます。私たちの空き家に対する考え方を変容させることや、空き家市場を活性化させる仕組みづくりなど、これからの住宅の在り方について考えることが必要です。そして、そもそも住宅を個人が所有しなければ、空き家の発生を抑えることが可能だと考えます。住宅を所有しない新しい暮らしの形を考えていくべきであります。私たちの考え方を変容させ、脱持ち家社会を目指すことで住宅ストックの流動性を高め、空き家の発生を抑えることで持続可能なまちへ変容させましょう。
 小矢部市の人口減少は止めることができません。2060年に小矢部市の人口は、約2万人にまで減少することが確実です。私たちはこれから先の50年、どんなまちを目指していくべきなのでしょうか。過去の50年と同じでは、絶対良くなりません。新しい50年の未来を創造しなければいけません。おやべが人口減少時代に突入した今、おやべのまちや住民にまちの未来について投げかけましょう。そして、住民と一緒に持続可能なおやべのまちの未来を創造しましょう。

【こどもの未来を描く】 

 国において、こども施策を社会全体で総合的かつ強力に推進していくための包括的な基本法であるこども基本法が令和5年4月に施行されました。こどもの視点で、こどもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押ししようとしています。
 内閣府の「社会意識に関する世論調査」では、近所付き合いの程度の変遷について1975年に52.8%あった「親しく付き合っている」という回答が2004年には22.3%にまで低下しました。地域コミュニティの希薄化は間違いなく進んでいます。さらに、内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 」(平成30年度)によれば、10代20代の悩み事の相談相手として親以外に「近所や学校の友だち」が日本では特に多く「誰にも相談しない」という回答は諸外国の2倍程高い割合でした。社会意識や人口構造が変わる中で、地域コミュニティはネガティブな方向に変容をしています。新型コロナウイルスの流行によりその変容は加速したと感じます。こどもたちが親・先生・学校の友人以外に相談のできる大人やコミュニティが過去の50年間よりも減っていると考えられます。こども家庭庁の調査では、こどもや若者の7割が「家や学校以外に安心できる居場所がほしい」と考えています。現在、こどもたちにとって家と学校以外の「第3の居場所」をつくり、地域でこどもの健やかな成長を支えられる環境をつくることが必要です。
 また、これから先の50年を見据えて、おやべの地域社会を牽引していく人財を育むことが、おやべの未来のためには必要不可欠です。しかし、今までの50年とは求められる人財が変わってきました。AIやテクノロジーの進化により、同じ作業を繰り返し正確にできる人財は求められなくなりました。これからの50年先を見据えれば、失敗を恐れず新たな価値やビジョンを創造できるアントレプレナーシップを身に付けた人財が求められます。アントレプレナーシップは新しいベンチャーや産業を立ち上げることによる市場拡大や、既存の団体や企業内においても新しい価値を創造したり起業家的なエネルギーが企業に改革をもたらすことが期待されます。しかしながら、小矢部市内ではアントレプレナーシップ教育が実施されていません。文部科学省もアントレプレナーシップ教育に取り組むことが、社会の変化に対応して自分らしく生きられる力になると考えることから推進をしています。こどもたちがアントレプレナーシップを身に付ける機会をつくり、変化の激しい時代でも夢と希望を抱くことができるこどもの未来を創造しましょう。

※アントレプレナーシップ・・・世の中の課題に対して新しい解決策(商品・サービス)を打ち出し、リスクを恐れずに立ち向かっていく精神・姿勢のことを指します。日本語では「起業家精神」と訳されることも多いため、起業家のみに求められる素質と思われがちですが、現代のビジネスパーソンにとっても重要な能力といわれています。

【心豊かな青少年を育む】

 民間企業が実施した「ネット利用における実態調査」(2022年4月~2023年2月実施分)によると、小学校6年生のスマートフォン所有率55.3%、パソコン所有率12.6%、タブレット所有率36.6%、ゲーム機48.7%であり、こどもたちの電子端末所有率は年々上昇傾向にあります。電子端末に熱中していると、保護者とのコミュニケーションなど、生身の人間との接触機会が減少することで、アイコンタクトや顔の表情を使った表現方法などを学ぶ機会の減少につながっているといわれています。そのため、電子端末上のコミュニケーションではなく、生身の人間同士の接触をより多くもつことが重要です。
 また、小矢部市出身の大谷米太郎翁はこどもの頃から遊びで相撲に取り組んでいました。人間に対する洞察力に優れた大谷米太郎翁の人間力は相撲で養われたことと思われます。さらに、1対1で競う相撲はチームスポーツと違い相手から逃げることができません。その対戦の中で自己と向き合うことが求められます。その結果、生身の人間と触れ合うからこそ得られる感覚や感情があります。相撲という競技を通じて「礼」を学び「努力する」ことや「思いやり」等、社会生活に必要な徳性の涵養の場をつくり、心豊かな青少年を育成しましょう。

【組織力を強化する】

 組織のリソースを最大化させましょう。限られた人員で最大のインパクトを地域へ与えるために、理念への共感を促し私たちの目指すべき方向性を共有します。さらに、どうすれば地域課題にアプローチした事業構築をおこない地域へインパクトを与えることができるのか、事業構築の手法について学ぶ機会を設けましょう。また、会員拡大は組織の基盤になります。会員拡大に取り組むことでより多くの同志が集まれば、地域により大きなインパクトを与えられる組織に変容できます。さらに、新入会員の育成も重要です。今後の小矢部青年会議所を担う人財の育成に力を注ぎましょう。そして、様々なパートナーと共創・協働・連携に取り組むことで、組織のリソース不足を補うことが必要です。まず、収入を会費に頼らない新たな収入源を確保しましょう。
 会員拡大、会員の資質向上及び新たな財源確保は、より一層私たちの大きな力になります。人財と資金力の強化により、地域にインパクトを与える組織に変容しましょう。

【家族の共感を得る】

 私たちは家族の共感と支えがあるために、JC活動・運動を展開することができることを忘れてはいけません。共感を生むためには私たちのストーリーを共有することが重要です。私たちが地域の課題を捉え地域課題にインパクトを与えるまでの過程や、自己成長を目指し会員の一人ひとりが変容していく過程のストーリーを共有する機会をつくりましょう。また、JC会員とその家族が同じ時間を共有する機会を創造することで、さらなる家族の共感を生み出しましょう。家族の共感を得ることで、家族に愛される組織に変容すると確信しています。

【組織を支える】

 私たちの活動・運動は、会議の上で成り立っています。理事会を中心とした会議の場でおやべの未来を見据えて、真剣に議論することで会員の成長につなげてきました。そのため円滑な会議運営が非常に重要です。また、会員の権利として各種セミナーやフォーラムに参加して成長できる機会が多くあります。この成長の機会を逃さず会員の成長につなげましょう。そして、情報社会においてはWebや各種SNSを活用した情報発信は重要度が日々高くなっています。情報発信をより強化することで、地域における小矢部青年会議所の存在価値を最大限に高めましょう。さらに、定款や規則に基づいた運営や財政の監理を徹底することでコンプライアンスを遵守し、地域に信頼される組織であり続けましょう。

【むすびに】

Stay hungry, stay foolish

Steve Jobs

 将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。青年会議所で得る個人の成長と同志の絆はいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶと確信しています。現状に満足せず、より先の未来を渇望し、追い求めましょう。
 私たちの時間は限られています。だから、青年会議所での時間を無駄にしないでください。他人の考えや社会の慣例・慣習・常識に従って行動することは辞めましょう。何より大事なのは、自分の気持ちや直感に従う勇気を持つことです。